ら生活の必要品は充分に生産されておらぬのである。
 それならばなぜ、そういうたいせつな品物がまだ充分にできておらぬのに、都会に出てみると、至る所の店頭にさまざまのぜいたく物や奢侈品《しゃしひん》が並べられてあるかといえば、実はそこに今日の経済組織の根本的欠点があるのである。
 けだし今日の経済社会は、需要ある物に限りこれを供給するということを原則としているのである。ここに需要というは、単に要求というと同じではない。一定の要求に資力が伴うて来て、始めてそれが需要となるのである。たとえば襤褸《ぼろ》をまとうた乞食《こじき》がひだるそうな面《つら》つきをしながら、宝石店の飾り窓にのぞき込んで金指輪や金時計にあこがれたとて、それは単純な欲求で、購買力を伴うた需要というものではない。しかして今日の経済組織の特徴は、かくのごとき意味における需要をのみ顧み、かかる需要ある物に限りこれを生産するという点にある。しからばその需要なるものは、今日の社会でどうなっているかといえば、生活必要品に対する需要よりも、奢侈ぜいたく品に対する需要のほうが、いつでもはるかに強大優勢である。これ多くの生活必要品がまずあと
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