物を得ておらぬ者はたくさんあろうと思う。もちろんまずい物でもなんでも腹一杯詰め込んでおれば、本人は別にひもじいとは思っておらぬであろうが、しかし医者の目から見て営養不足に陥っている者は少なからずいるだろうと思う。それならばそれらの人々に当てがわるべき米の飯なり魚肉なり獣肉なりが、金持ちのためにみんな奪い取られているかと言えば、無論金持ちは金持ち相応にぜいたくな金のかかった食事をしているであろうが、しかしそれかというて、それらの金持ちが毎日一人して百人前千人前の米や肉を食べているわけではない。あるいはまた冬の夜、寒さを防ぐに足るだけの夜具、衛生にさしつかえないだけの清潔な蒲団《ふとん》、それをさえ充分に備えていない家族も少なくはあるまいと思うが、それならば金持ちの所へ行ってみると、これらの貧乏人に渡るべきはずの木綿《もめん》の夜具がことごとく分捕って積み重ねてあるかといえば、決してそんなわけのものではない。
されば今日社会の多数の人々が、充分に生活の必要品を得《う》ることができなくて困っているのは、たくさんに品物はできているがただその分配のしかたが悪いというがためではなくて、実は初めか
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