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○問題とされてゐる句は、少陵の野老声を呑んで哭す、春日|潜《ひそ》かに行く曲江の曲といふ句で始まる七言古詩の結句である。岩波文庫版には欲往城南忘南北[#「南北」に白丸傍点]とし、脚註に「一本に南北を城北に作れるあり」としてあるが、私は城北を南北としては全く駄目だと思ふ。
○荊公集句とは王荊公唐百家詩選のことか。
(二十八)
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今人杜詩を解する、但《た》だ出処を尋ね、少陵の意初めより是の如くならざるを知らず。且つ岳陽楼の詩の如き、昔聞[#(ク)]洞庭[#(ノ)]水、今上[#(ル)]岳陽楼、呉楚東南[#(ニ)]※[#「土+斥」、第3水準1−15−41][#(ケ)]、乾坤日夜浮[#(ブ)]、親朋無[#二]一字[#一]、老病有[#二]孤舟[#一]、戎馬関山[#(ノ)]北、憑[#レ]軒涕泗流[#(ル)]、此れ豈に出処を以て求む可けんや。縦《たと》ひ字字出処を尋ね得しむるも、少陵の意を去る益※[#二の字点、1−2−22]遠し。蓋《けだ》し後人|元《も》と杜詩の古今に妙絶なる所以《ゆゑん》のもの何処に在るやを知らず、但《た》だ一字も亦た出処あるを以て工
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