得酔工夫、伴人歌扇懶妝梳。戸外緑楊春繋馬、牀頭紅燭夜呼盧、相逢還解有情無。(放翁の引くところでは、戸外が門外、牀頭が牀前となつてゐる。)
○薛礪若の『宋詞通論』には、晏叔原の詞について、次の如く述べてある。「彼の詞、最も善く詩句を融化す。後期の周美成と正に復た遥々相|映《て》らす。例へば彼の浣渓沙「戸外緑楊春繋馬、牀頭紅燭夜呼盧」の二句の如きは、完全に唐の韓※[#「雄のへん+羽」、第4水準2−84−90]の詩句を用ひ、僅《わづか》に原詩「牀前」の「前」字を将《も》つて一個「頭」字に易へ、而かも用ひ来つて直ちに天衣無縫の如し、云々」。

       (二十一)

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 白楽天云ふ、微月初三夜、新蝉第一声と。晏元憲云ふ、緑樹新蝉第一声と。王荊公云ふ、去年今日青松路、憶似聞蝉第一声と。三たび用ひて愈※[#二の字点、1−2−22]《いよいよ》工《たくみ》。詩の窮り無きを信ず。(老学庵筆記、巻十)
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○王荊公とは既に述べた如く王安石のこと。

       (二十二)

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 唐の王建の牡丹の詩に云ふ、可[#(シ)][#レ]憐[
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