]落[#(ツノ)]李花那[#(ゾ)]可[#(ン)][#レ]数[#(フ)]、偶行[#(キテ)][#二]芳草[#(ヲ)][#一]歩[#(スルコト)]因[#(テ)]遅[#(シ)]と。初め其意を解せず、久くして乃ち之を得。蓋し師川は専ら陶淵明を師とせる者なり。淵明の詩、皆な適然寓意、物に留まらず。悠然見南山の如し。東坡の其の決して南山を望むに非ざるを知る所以《ゆゑん》なり。今、細数落花、緩尋芳草と云へば、留意甚し、故に之を易《か》ふと。又云ふ。荊公多く淵明の語を用ひ而かも意異なる。柴門雖設要常関、雲尚無心能出岫の如き、要字能字皆な淵明の本意に非ざる也と。(老学庵筆記、巻四)
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○これは全部他人の説を引いただけのものだが、もちろん賛同の意を含めての引用である。文中にいふところの荊公とは王安石のこと。詩は北山と題する七絶で、全文を写し出せば次の如くである。北山輸[#(シテ)][#レ]緑[#(ヲ)]漲[#(ル)][#二]横陂[#(ニ)][#一]、直塹回塘※[#「さんずい+艶」、第4水準2−79−53]※[#「さんずい+艶」、第4水準2−79−53]時、細[#(ニ)]数[#(ヘ)][#二]落花[#(ヲ)][#一]因[#(リテ)]坐[#(スルコト)]久[#(ク)]、緩[#(ニ)]尋[#(テ)][#二]芳草[#(ヲ)][#一]得[#(ルコト)][#レ]帰[#(ヲ)]遅[#(シ)]。
○なほ文中に東坡の云々と言つてあるのは、東坡の次の説を指したものである。「采[#(リ)][#二]菊[#(ヲ)]東籬[#(ノ)]下[#(ニ)][#一]、悠然[#(トシテ)]見[#(ル)][#二]南山[#(ヲ)][#一]。これは菊を采る次いでに偶然山を見るのである。初めより意を用ひずして、境と意と会ふ、故に喜ぶべき也。もし望南山となせば便ち興味索然たるを覚ゆ」。

       (十四)

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 (跋王右丞集) 余年十七八の時、摩詰の詩を読む最も熟す。後、遂に之を置くもの幾《ほと》んど六十年。今年七十七、永昼無事、再び取つて之を読む。旧師友を見るが如し、間闊の久きを恨む。(渭南文集、巻二十九)
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○王右丞、摩詰、共に王維のこと。この跋文は王維に対する放翁の関係を知るに足るもの。

       (十五)

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 (跋花間
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