日は食《は》ます米持ち来りませ米さへ乏し今のわが庵
老妻《おいづま》のかしげる飯《いひ》を食《た》うべつつ語りあかさな春の一夜《いちや》を
[#地から1字上げ]十二月二十四日

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歳末歌屑
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またここをいゆきするかとゆめにみつさめてののちはいづこともしらえず(たび重なりてあり/\と同じ土地に遊ぶ夢を見、夢の中にてしか思ひながら、さめての後は茫漠として定かならず、人にもかかる経験あるものにや)
堺より一羽の鶏《とり》を割きもちて尋ねてくるる友もありけり(福井君来訪。この頃鶏肉を手に入るること極めて難し。食事の公定価格は一人五円を最高限とするの規定なるも、二十五円出さばいつにも鶏肉を食し得る料理店あり、また一羽十五円出さば鷄一羽入手し得べしなどいふ噂を耳にすれど、所詮我には縁なきことなり。この日福井君一羽の鶏を割かしめ、大皿に盛りて遠く堺より持ち来りくれらる。好意感謝すべきなり。乃ちしるこを作りて饗す)
ふるさとの小豆《あづき》に湯山の餅入れてはつかにつくる味こきしるこ[#地から1字上げ]十二月二十五日
朝な夕な諸行無常とひびきたる寺々《てらで
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