わがいのち太古の民の安けさにかも似る
いとけなき頃ゆ人にまさりて脈多し身のさが半ばここに負へるか
如何なれば生きのたづきにふけれるや人のいのちは短きものを
夕日てる雲見つつあれば今も尚ほひとやの窓の空おもはしむ
夕日てる雲見つつあれば海見ざる久《ひさ》になりぬと此の十年《ととせ》を思ふ
うたてしや思ひあがれる人のさまひとときわれもかくてありけむ
客ありて便所よごして帰りしを掃除してゐる妻を見てをり
老いさきのはや短かかる我なればよき思ひ出こそ妻にのこさな
筆とりてあらでは生きて行けぬかと妻さへ我を怪む日のあり[#地から1字上げ]以上、十月十日より十七日に至る
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途上所見
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立ちどまり何をするぞと見てあれば放屁一つして去りゆくおうな
ふち赤き茶寮の旗のひるがへりあまざけひさぐ頃ともなりぬ[#地から1字上げ]十月十日
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わがねがひ
[#ここで字下げ終わり]
老い去りて
美しき家を好まず
美しきおみなごを見むと欲《ほ》りせず
ただ美しき詩《し》を
われ朗々として誦するに足る
美しき文《ぶん》を見むことを願ふ
[#地から1
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