洛したまひしは春のさかりなりしに
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たらちめの来ましし春に芽ばえける赤楊《はん》の大樹《ふとき》ははやちりそめにつつ[#地から1字上げ]十月十二日
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閑居雑詠
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堺より真魚《まな》もたらして友来たるこのときつよに冥加をおもへ
老妻《おいづま》とわかちて食《た》べし鯔《ぼら》の味ひととせあまり忘れゐし味
無為にして物もらふことの多ければ経よまぬ僧とおのが身を愧づ
をさなくてなじみし村の山鳩を京のほとりにききつつ住めり
俗客のかへりみせざるしづけさをわびしきものと人おもふらし
二人《ふたり》して京のほとりにかくろひて心しづかに世を終へむとす
大戦《たいせん》の世ともおもほへずわが老《おい》をやしなふやどのこのしづけさは
今更に生きながらへて何かせむものおしみするわれをさげしむ
秋の蚊の人をこほしみ寄りけるをたゆたふ間《ま》なくうち殺しけり
千丈の大浪いまに来たるらし板に縋《すが》りて浪を越さばや
明日《あす》よりはたばこやめむと思《も》ひつつ寝《い》ねあさあけに先づ吸ふ「さつき」のけむり
飯《いひ》はめばこころ足らへり
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