だはしをよづ
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老い去つて漸く寒暑を厭ふ
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あつき日は秋をまちわびさむき日は春をこひつつ老いゆく身となり[#地から1字上げ]七月二十九日

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詩集『一点鐘』に題す
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近き頃世に出でし
人の詩集を買ひ来て読む
手すりの和紙に木目のこり
活字の墨も匂ふばかりぞ
短詩四十余章
余白ゆたかに占め得て
庭ひろき深院に
なごみて貴人の住めるに似たり
そねみにかよふ心ありて
いねがての夏の夜の
はかなしや夢のとだへに
詩人《うたびと》ならぬ身をこそ恨め
[#地から1字上げ]八月九日

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菲才をなげく
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心願すでにことごとく満ちてと
みづからは詩《シ》にも書きつれ
ただ一つのみ願ひ遂げ得で
いつしかにわれ世をし去るらむ
あやしくもたへなりいにし世の詩《うた》はも
そねみに似たる心ありて
蕭条たるこの垂老の秋の日に
ひとりわれ
骨を撫でつつ菲才をなげかふ
[#地から1字上げ]八月十三日定

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中秋
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平生最所愛  平生最も
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