時紛また聞かず。
倚爐思往事  炉に倚りて往事を思ひ、
擧首看浮雲  首《かうべ》を挙げて浮雲を看る。
[#地から1字上げ]一月十三日

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閑居 其二
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爛漫朝眠後  爛漫たる朝眠の後、
携孫就午陽  孫を携へて午陽に就く。
讀書歎菲才  書を読みては菲才を歎じ、
曳杖愛長塘  杖を曳いて長塘を愛す。
紅火煮新茗  紅火新茗を煮、
青燈夢故郷  青灯故郷を夢む。
無爲無病叟  無為無病の叟、
閑裡四分忙  閑裡四分の忙。
[#地から1字上げ]一月十六日

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冬夜偶成
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硯池冰欲雪  硯池氷りて雪ならんとするも、
茵蓐暖於春  茵蓐春よりも暖かなり。
憶去年今夜  憶ふ去年の今夜、
幽窗抱膝身  幽窓膝を抱きし身。
[#地から1字上げ]一月二十一日

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莫歎
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免殞身鋒鏑  身を鋒鏑に殞すを免れ、
偸生寂避名  生を偸み寂として名を避く。
莫傷時事否  傷むことなかれ時事の否なるを、
應水到渠成  水到りて渠成るあるべし。
[#地から1字上げ]一月
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