に見る京都の美しさ、なつかしさは、限りなきものあり
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知恩院の鐘が鳴るかもなつかしや老いらくの耳にかそけくも聞く
十年あまり放浪の旅ゆかへりて眺むればうつくしきかな叡山の色[#地から1字上げ]一月四日

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今はすでに世に用なき敗残の小儒なれども尚ほ時に我を顧る故旧あるを喜びて歌へる
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世を忘れ世に忘らるる我なれば尋ねて来ます友をうれしむ
世を忘れ世に忘らるる身にしあれば甲斐なき友は自然《じねん》に去《さ》りぬ

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十数年ぶりに会ひたる竹田博士、老大家の風格に一段の温厚さを加へられ、真に故旧に会ひたる感を起さしむ
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放浪の旅ゆかへりて相見ればふるさとに似し君がおもかげ[#地から1字上げ]一月十二日

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庚午正月三日、余携家移東京、當時心竊不期
生還、及今十有二年矣、頃日賃得一屋、復還
京洛、日夕毎對舊山河、感慨不少、乃賦一絶
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當時竊慕古人蹤  当時窃に古人の蹤を慕ひ、
挺一身忘萬戸封  一身を挺して万戸の封を忘る。
豈圖十有餘
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