こで字下げ終わり]
[#地から1字上げ]八月六日

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歎菲才
[#ここで字下げ終わり]
半生從筆硯  半生筆硯に従ひ、
贏得楮塵堆  贏ち得たり楮塵の堆。
垂死悲秋客  垂死悲秋の客、
撫骸歎菲才  骸《ほね》を撫《ぶ》して菲才を歎ず。
[#地から1字上げ]十月一日

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未嘗沽
[#ここで字下げ終わり]
半生從筆硯  半生筆硯に従ひ、
空作蠹魚奴  空しく蠹魚の奴と作《な》る。
惟喜書百卷  惟だ喜ぶ書百巻、
一字未嘗沽  一字未だ嘗て沽《う》らず。
[#地から1字上げ]十月一日
[#改丁]

       閉戸閑詠 第二集(昭和十七年度)
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  昭和十七年(壬午、一九四二年)

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昨臘家を携へて移り来り、十二年を距てて再び洛中に住む。

法然院にて
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初めてここに詣でしより正に三十有余年を経たり
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来て見れば三十年《みそとせ》あまり経にしかど昔ながらにゆらぐみあかし
三十年をありしながらの姿にてわれを待ちにしこのしづけさよ

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十二年目
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