宛として萍の水に在るが如し、
從風西又東    風に従うて西又た東。
此是鄙夫事    此は是れ鄙夫の事、
學者那得同    学者那んすれぞ同するを得ん。
丈夫苟志學    丈夫苟くも学に志す、
指心誓蒼穹    心を指して蒼穹に誓ふ。
惟要一無愧    惟だ一の愧なきを要す、
何必問窮通    何ぞ必ずしも窮通を問はん。
困睫※[#「夢」の「夕」に代えて「目」、第4水準2−82−16]騰老    困睫※[#「夢」の「夕」に代えて「目」、第4水準2−82−16]騰の老、
耳聾心未聾    耳聾するも心未だ聾せず。
寄語世上輕薄子  語を寄す世上の軽薄子、
莫擬瞞此避世翁  此の避世の翁を瞞かんと擬する莫れ。
[#地から1字上げ]七月十六日

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この邂逅に感謝す

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六月下旬、東京保護観察所よりの来状に本づき、謂はゆる左翼文献に属する内外の図書、約六百四十冊を官に収め、身辺殊に寂寞、ただ陸放翁集あり、日夜繙いて倦まず、聊か自ら慰む
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雨過ぎ風落ちし跡
月さへ照れる山村の
静けさに身を置かんとて、
刑余帝京のかた
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