[#ここで字下げ終わり]
戰禍未收時未春 戦禍未だ収まらず時未だ春ならず、
天荒地裂鳥魚瞋 天荒れ地裂けて鳥魚いかる。
何幸潛身殘簡裡 何の幸ぞ身を潜む残簡の裡、
腥風吹屋不吹身 腥風屋を吹けども身を吹かず。
[#地から1字上げ]三月二日
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牢愁の思出
[#ここで字下げ終わり]
春の日のくれゆく空のあはれさはひとりながめて牢にゐし時[#地から1字上げ]四月十二日
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近頃頻りに疲労を覚え、やがて寝付くべきか
と思ふほどなり、小詩を賦して自ら慰む
[#ここで字下げ終わり]
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弱いからだが段々に弱くなり、
残りの力もいよ/\乏しくなつて来た。
ちよつと人を尋ねても熱を出し、
書を書いても熱を出し、
絵を描いても熱を出し、
碁を打つても熱を出す。
私は私の生涯のすでに終りに近づきつゝあることを感じる。
やがて寝付くやうになるのかも知れない。
だが私は別に悲みもしない。
過去六十年の生涯において、
何の幸ぞ!
私はしたいと思ふこと、せねばならぬと思ふことを、
力相応、思ふ存分にやつて来て、
今は早
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