疲れ去ればすなはち眠る。
古人いふ無事是れ貴人。
羨む人は世になくも、
われはひとりわれを羨む。
[#地から1字上げ]六月十九日
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青楓氏を訪ひて遇はず
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きかぬベル押しつゝ君が門のとに物乞ふ如く立つはさびしも[#地から1字上げ]〔七月一日〕
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出獄の前日を思ひ起して 二首
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わかれぞと登りて見れば荒川や潮みちぬらし水さかのぼる
または見ぬ庭ぞと思ふ庭の面に真紅のダリヤ咲きてありしか[#地から1字上げ]八月七日
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ことし春の彼岸、郷里より取寄せて百日草、風船かづら、花びし草、朝鮮朝顔などの種子を蒔けり。庭狭ければ思ふに任せざれども、この頃いづれもそくばくの花をつけたり。中につき百日草は、祖母の住み給ひし離家の庭前に咲き乱れ居るを、幼時より見慣れ来し花なれば、ひなびたれどもいと懐し
[#ここで字下げ終わり]
ふるさとの種子と思へばなつかしや百日草の庭隅に咲く
[#地から1字上げ]八月七日
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獄中の有章君に寄す
[#ここで字下げ終わり]
あはれいか
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