2−61]  空しく危欄に倚りて北※[#「氓のへん+おおざと」、第3水準1−92−61]を望む。
[#地から1字上げ]一月八日

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津田青楓氏「君と見て久しくなりぬこのころはおとさたもなしいかにしたまふ」の歌を寄せられたるに答ふ
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朝寝して虫ばみ本をつくろひて茶を飲みをれば一日はすぎぬ
人は老い着物もやれて綿出でぬよごれと見しは綿にてありき[#地から1字上げ]二月二十五日

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老來始得閑
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夙吾號閉戸閑人  夙にわれ閉戸閑人と号す、
晩歳斯名始作眞  晩歳この名始めて真となる。
天以餘生恩此叟  天は余生を以てこの叟をめぐみ、
教爲高臥自由身  高臥自由の身となさしむ。
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余三十歳以前已號閉戸閑人以及于今也
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[#地から1字上げ]三月六日

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老後無事
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たとひ力は乏しくも
出し切つたと思ふこゝろの安けさよ。
捨て果てし身の
なほもいのちのあるまゝに、
飢え来ればすなはち食ひ、
渇き来ればすなはち飲み、

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