十一日

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歳暮憶陣中之小林君、君代劍帶刀、
故第三句用刀字
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一年將盡夜  一年将に尽きなんとするの夜、
萬里未歸人  万里未だ帰らざるの人。
枕刀眠曠野  刀を枕として曠野に眠り、
驚夢別愁新  夢に驚けば別愁新たなり。
[#地から1字上げ]十二月二十七日
[#改段]

  〔昭和十四年(一九三九)〕

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六十一吟
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已躋華壽白頭翁  すでに華寿に躋る白頭の翁、
枕蠹書眠願有終  蠹書を枕として眠り終あらんことを願ふ。
羸駑不與兵戈事  羸駑与からず兵戈の事、
心似山僧萬籟空  心は山僧に似て万籟空し。
[#地から1字上げ]一月元旦

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憶亡友吉川泰嶽居士
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來往風塵學古狂  風塵に来往して古狂を学び、
長忘嶽麓※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]蘭芳  長く嶽麓※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]蘭の芳を忘る。
刑餘始作無爲叟  刑余始めて無為の叟となり、
空倚危欄望北※[#「氓のへん+おおざと」、第3水準1−9
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