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同じく唐詩選にある李商隠の夜雨寄北と題する詩は、岩波文庫本では次のやうに読ませてあるが、私はこの読み方にも服しかねる。
[#ここから3字下げ]
君問歸期未有期 君に[#「に」に白丸傍点]に帰期を問ふに[#「問ふに」に白丸傍点]未だ期あらず
巴山夜雨漲秋池 巴山の夜雨秋池に漲る。
何當共翦西※[#「片+總のつくり」、第3水準1−87−68]燭 何《いつ》か当に共に西※[#「片+總のつくり」、第3水準1−87−68]の燭を剪り
卻話巴山夜雨時 却つて巴山夜雨の時を話《かた》るべきか[#「か」に白丸傍点]。
[#ここで字下げ終わり]
私は嘗て未決監に居た時この詩を読んで、実にいい詩だと感じたことがある。しかし私は起句を「君に[#「に」に白丸傍点]帰期を問ふに[#「問ふに」に白丸傍点]」などと読まず、「君は[#「は」に白丸傍点]帰期を問へども[#「問へども」に白丸傍点]」と読む。文庫本には、「北は北地に在る者の意、君は北地に在る者を指す」と註してあるが、それはそれに相違ないけれども、私はもつと具体的に、ここの君は細君のことだと解する。北は
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