ん》をのぼって行った。葉子は吾妻《あずま》コートも脱がずにいいかげんぬれたままで黙ってそのあとからついて行った。
二階の間《ま》は電燈で昼間《ひるま》より明るく葉子には思われた。戸という戸ががたぴし[#「がたぴし」に傍点]と鳴りはためいていた。板|葺《ぶ》きらしい屋根に一寸|釘《くぎ》でもたたきつけるように雨が降りつけていた。座敷の中は暖かくいきれて、飲み食いする物が散らかっているようだった。葉子の注意の中にはそれだけの事がかろうじてはいって来た。そこに立ったままの倉地に葉子は吸いつけられるように身を投げかけて行った。倉地も迎え取るように葉子を抱いたと思うとそのままそこにどっか[#「どっか」に傍点]とあぐらをかいた。そして自分のほてった頬《ほお》を葉子のにすり付けるとさすがに驚いたように、
「こりゃどうだ冷えたにも氷のようだ」
といいながらその顔を見入ろうとした。しかし葉子は無性《むしょう》に自分の顔を倉地の広い暖かい胸に埋《うず》めてしまった。なつかしみと憎しみとのもつれ合った、かつて経験しない激しい情緒がすぐに葉子の涙を誘い出した。ヒステリーのように間歇的《かんけつてき》にひ
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