き起こるすすり泣きの声をかみしめてもかみしめてもとめる事ができなかった。葉子はそうしたまま倉地の胸で息気《いき》を引き取る事ができたらと思った。それとも自分のなめているような魂のもだえの中に倉地を巻き込む事ができたらばとも思った。
 いそいそと世話女房らしく喜び勇んで二階に上がって来る葉子を見いだすだろうとばかり思っていたらしい倉地は、この理由も知れぬ葉子の狂体に驚いたらしかった。
 「どうしたというんだな、え」
 と低く力をこめていいながら、葉子を自分の胸から引き離そうとするけれども、葉子はただ無性にかぶりを振るばかりで、駄々児《だだっこ》のように、倉地の胸にしがみついた。できるならその肉の厚い男らしい胸をかみ破って、血みどろになりながらその胸の中に顔を埋めこみたい――そういうように葉子は倉地の着物をかんだ。
 徐《しず》かにではあるけれども倉地の心はだんだん葉子の心持ちに染められて行くようだった。葉子をかき抱《いだ》く倉地の腕の力は静かに加わって行った。その息気《いき》づかいは荒くなって来た。葉子は気が遠くなるように思いながら、締め殺すほど引きしめてくれと念じていた。そして顔を伏せ
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