りながら次の間に着かえに行った。
女中が膳部《ぜんぶ》を片づけ終わらぬうちに古藤が来たという案内があった。
葉子はちょっと当惑した。あつらえておいた衣類がまだできないのと、着具合がよくって、倉地からもしっくり[#「しっくり」に傍点]似合うとほめられるので、その朝も芸者のちょいちょい着《ぎ》らしい、黒繻子《くろじゅす》の襟《えり》の着いた、伝法《でんぽう》な棒縞《ぼうじま》の身幅《みはば》の狭い着物に、黒繻子と水色|匹田《ひった》の昼夜帯《ちゅうやおび》をしめて、どてら[#「どてら」に傍点]を引っかけていたばかりでなく、髪までやはり櫛巻《くしま》きにしていたのだった。えゝ、いい構うものか、どうせ鼻をあかさせるならのっけ[#「のっけ」に傍点]からあかさせてやろう、そう思って葉子はそのままの姿で古藤を待ち構えた。
昔のままの姿で、古藤は旅館というよりも料理屋といったふうの家の様子に少し鼻じろみながらはいって来た。そうして飛び離れて風体《ふうてい》の変わった葉子を見ると、なおさら勝手が違って、これがあの葉子なのかというように、驚きの色を隠し立てもせずに顔に現わしながら、じっ[#「じっ」に
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