傍点]とその姿を見た。
 「まあ義一さんしばらく。お寒いのね。どうぞ火鉢《ひばち》によってくださいましな。ちょっと御免くださいよ」そういって、葉子はあでやかに上体だけを後ろにひねって、広蓋《ひろぶた》から紋付きの羽織《はおり》を引き出して、すわったままどてら[#「どてら」に傍点]と着直した。なまめかしいにおいがその動作につれてひそやかに部屋《へや》の中に動いた。葉子は自分の服装がどう古藤に印象しているかなどを考えてもみないようだった。十年も着慣れたふだん着《ぎ》できのうも会ったばかりの弟のように親しい人に向かうようなとりなし[#「とりなし」に傍点]をした。古藤はとみには口もきけないように思い惑っているらしかった。多少|垢《あか》になった薩摩絣《さつまがすり》の着物を着て、観世撚《かんぜより》の羽織|紐《ひも》にも、きちん[#「きちん」に傍点]とはいた袴《はかま》にも、その人の気質が明らかに書き記《しる》してあるようだった。
 「こんなでたいへん変な所ですけれどもどうか気楽《きらく》になさってくださいまし。それでないとなんだか改まってしまってお話がしにくくっていけませんから」
 心置きな
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