ばかしゅうござんすわ。報正新報社にならわたし御懇意の方も二人《ふたり》や三人はいらっしゃるから、なんならわたしからそれとなくお話ししてみてもようございますわ。わたしはまたお二人とも今まであんまり平気でいらっしゃるんで、もうなんとかお話がついたのだとばかり思ってましたの」
と女将は怜《さか》しそうな目に真味な色を見せてこういった。倉地は無頓着《むとんじゃく》に「そうさな」といったきりだったが、葉子は二人《ふたり》の意見がほぼ一致したらしいのを見ると、いくら女将《おかみ》が巧みに立ち回ってもそれをもみ消す事はできないといい出した。なぜといえばそれは田川夫人が何か葉子を深く意趣に思ってさせた事で、「報正新報」にそれが現われたわけは、その新聞が田川博士の機関新聞だからだと説明した。倉地は田川と新聞との関係を始めて知ったらしい様子で意外な顔つきをした。
「おれはまた興録《こうろく》のやつ……あいつはべらべらしたやつで、右左のはっきり[#「はっきり」に傍点]しない油断のならぬ男だから、あいつの仕事かとも思ってみたが、なるほどそれにしては記事の出かたが少し早すぎるて」
そういってやおら立ち上が
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