自分を迫害しようとするなら、こちらもどこかの新聞を手に入れて田川夫人に致命傷を与えてやろうかという(道徳を米の飯と同様に見て生きているような田川夫人に、その点に傷を与えて顔出しができないようにするのは容易な事だと葉子は思った)企《たくら》みを自分ひとりで考えた時でも、あの記者というものを手なずけるまでに自分を堕落させたくないばかりにその目論見《もくろみ》を思いとどまったほどだった。
 その朝も倉地と葉子とは女将《おかみ》を話相手に朝飯を食いながら新聞に出たあの奇怪な記事の話をして、葉子がとうにそれをちゃん[#「ちゃん」に傍点]と知っていた事などを談《かた》り合いながら笑ったりした。
 「忙しいにかまけて、あれはあのままにしておったが……一つはあまり短兵急にこっち[#「こっち」に傍点]から出しゃばると足もとを見やがるで、……あれはなんとかせんとめんどうだて」
 と倉地はがらっ[#「がらっ」に傍点]と箸《はし》を膳《ぜん》に捨てながら、葉子から女将に目をやった。
 「そうですともさ。下らない、あなた、あれであなたのお職掌《しょくしょう》にでもけち[#「けち」に傍点]が付いたらほんとうにばか
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