んじょう》な、日に焼けた、男性的な顔を見やる葉子の、乙女《おとめ》というよりももっと子供らしい様子は、二人《ふたり》の妹を前に置いてきちん[#「きちん」に傍点]と居ずまいを正した葉子のどこにも見いだされなかった。その姿は三十前後の、充分分別のある、しっかり[#「しっかり」に傍点]した一人《ひとり》の女性を思わせた。貞世もそういう時の姉に対する手心《てごころ》を心得ていて、葉子から離れてまじめにすわり直した。こんな時うっかり[#「うっかり」に傍点]その威厳を冒すような事でもすると、貞世にでもだれにでも葉子は少しの容赦もしなかった。しかし見た所はいかにも慇懃《いんぎん》に口を開いた。
 「わたしが木村さんの所にお嫁に行くようになったのはよく知ってますね。米国に出かけるようになったのもそのためだったのだけれどもね、もともと木村さんは私のように一度先にお嫁入りした人をもらうような方《かた》ではなかったんだしするから、ほんとうはわたしどうしても心は進まなかったんですよ。でも約束だからちゃん[#「ちゃん」に傍点]と守って行くには行ったの。けれどもね先方《むこう》に着いてみるとわたしのからだの具合が
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