女学者と話をしている様子が見えるようだった。
 しばらくそんな表面的なうわさ話などに時を過ごしていたが、いつまでもそうはしていられない事を葉子は知っていた。この年齢《とし》の違った二人《ふたり》の妹に、どっちにも堪念《たんねん》の行くように今の自分の立場を話して聞かせて、悪い結果をその幼い心に残さないようにしむけるのはさすがに容易な事ではなかった。葉子は先刻からしきりにそれを案じていたのだ。
 「これでも召し上がれ」
 食事が済んでから葉子は米国から持って来たキャンディーを二人の前に置いて、自分は煙草《たばこ》を吸った。貞世は目を丸くして姉のする事を見やっていた。
 「ねえさまそんなもの吸っていいの?」
 と会釈なく尋ねた。愛子も不思議そうな顔をしていた。
 「えゝこんな悪い癖がついてしまったの。けれどもねえさんにはあなた方《がた》の考えてもみられないような心配な事や困る事があるものだから、つい憂《う》さ晴らしにこんな事も覚えてしまったの。今夜はあなた方《がた》にわかるようにねえさんが話して上げてみるから、よく聞いてちょうだいよ」
 倉地の胸に抱かれながら、酔いしれたようにその頑丈《が
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