でいっぱいになった。えゝ、いっその事死んでくれ。この血祭りで倉地が自分にはっきり[#「はっきり」に傍点]つながれてしまわないとだれがいえよう。人身御供《ひとみごくう》にしてしまおう。そう葉子は恐怖の絶頂にありながら妙にしん[#「しん」に傍点]とした心持ちで思いめぐらした。そしてそこにぼんやり[#「ぼんやり」に傍点]したまま突っ立っていた。
いつのまに行ったのか、倉地と古藤とが六畳の間《ま》から首を出した。
「お葉さん……ありゃ泣いたためばかりの熱じゃない。早く来てごらん」
倉地のあわてるような声が聞こえた。
それを聞くと葉子は始めて事の真相がわかったように、夢から目ざめたように、急に頭がはっきり[#「はっきり」に傍点]して六畳の間《ま》に走り込んだ。貞世はひときわ背たけが縮まったように小さく丸まって、座ぶとんに顔を埋《うず》めていた。膝《ひざ》をついてそばによって後頸《うなじ》の所にさわってみると、気味の悪いほどの熱が葉子の手に伝わって来た。
その瞬間に葉子の心はでんぐり[#「でんぐり」に傍点]返しを打った。いとしい貞世につらく当たったら、そしてもし貞世がそのために命を落とす
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