いほどふるえていた。愛子は静かにそこに両手を腰からおろして立ち止まった。
「貞《さあ》ちゃんなんですその失礼は。出ておいでなさい」
葉子は激しく隣室に向かってこう叫んだ。隣室から貞世のすすり泣く声が哀れにもまざまざと聞こえて来るだけだった。抱きしめても抱きしめても飽き足らないほどの愛着をそのまま裏返したような憎しみが、葉子の心を火のようにした。葉子は愛子にきびしくいいつけて貞世を六畳から呼び返さした。
やがてその六畳から出て来た愛子は、さすがに不安な面持《おもも》ちをしていた。苦しくってたまらないというから額《ひたい》に手をあてて見たら火のように熱いというのだ。
葉子は思わずぎょっ[#「ぎょっ」に傍点]とした。生まれ落ちるとから病気一つせずに育って来た貞世は前から発熱していたのを自分で知らずにいたに違いない。気むずかしくなってから一週間ぐらいになるから、何かの熱病にかかったとすれば病気はかなり進んでいたはずだ。ひょっ[#「ひょっ」に傍点]とすると貞世はもう死ぬ……それを葉子は直覚したように思った。目の前で世界が急に暗くなった。電灯の光も見えないほどに頭の中が暗い渦巻《うずま》き
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