で邪魔でなくてなんだ……えゝ、そこじゃありゃせんよ。そこに見えとるじゃないか」
 倉地は口をとがらして顎《あご》を突き出しながら、どしん[#「どしん」に傍点]と足をあげて畳を踏み鳴らした。
 葉子はそれでも我慢した。そしてボタンを拾って立ち上がると倉地はもうワイシャツを脱ぎ捨てている所だった。
 「胸《むな》くその悪い……おい日本服を出せ」
 「襦袢《じゅばん》の襟《えり》がかけずにありますから……洋服で我慢してくださいましね」
 葉子は自分が持っていると思うほどの媚《こ》びをある限り目に集めて嘆願するようにこういった。
 「お前には頼まんまでよ……愛ちゃん」
 倉地は大きな声で愛子を呼びながら階下のほうに耳を澄ました。葉子はそれでも根《こん》かぎり我慢しようとした。階子段《はしごだん》をしとやか[#「しとやか」に傍点]にのぼって愛子がいつものように柔順に部屋《へや》にはいって来た。倉地は急に相好《そうごう》をくずしてにこやか[#「にこやか」に傍点]になっていた。
 「愛ちゃん頼む、シャツにそのボタンをつけておくれ」
 愛子は何事の起こったかを露知らぬような顔をして、男の肉感をそそるよ
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