け》のないその橋の上まで来てしまった。
橋の手前の小さな掛け茶屋には主人の婆《ばあ》さんが葭《よし》で囲った薄暗い小部屋《こべや》の中で、こそこそと店をたたむしたくでもしているだけだった。
橋の上から見ると、滑川《なめりがわ》の水は軽く薄濁って、まだ芽を吹かない両岸の枯れ葦《あし》の根を静かに洗いながら音も立てずに流れていた。それが向こうに行くと吸い込まれたように砂の盛《も》れ上がった後ろに隠れて、またその先に光って現われて、穏やかなリズムを立てて寄せ返す海べの波の中に溶けこむように注いでいた。
ふと葉子は目の下の枯れ葦《あし》の中に動くものがあるのに気が付いて見ると、大きな麦桿《むぎわら》の海水帽をかぶって、杭《くい》に腰かけて、釣《つ》り竿《ざお》を握った男が、帽子の庇《ひさし》の下から目を光らして葉子をじっ[#「じっ」に傍点]と見つめているのだった。葉子は何の気なしにその男の顔をながめた。
木部孤※[#「※」は「たけかんむりにエにふしづくり」、182−3]《きべこきょう》だった。
帽子の下に隠れているせいか、その顔はちょっと見忘れるくらい年がいっていた。そして服装からも
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