ちの中の一人《ひとり》がどうも見知り越しの人らしく感ぜられた。あるいは女学校にいた時に葉子を崇拝してその風俗をすらまねた連中の一人であるかとも思われた。葉子がどんな事をうわさされているかは、その婦人に耳打ちされて、見るように見ないように葉子をぬすみ見る他の婦人たちの目色で想像された。
 「お前たちはあきれ返りながら心の中のどこかでわたしをうらやんでいるのだろう。お前たちの、その物おじしながらも金目をかけた派手《はで》作りな衣装や化粧は、社会上の位置に恥じないだけの作りなのか、良人《おっと》の目に快く見えようためなのか。そればかりなのか。お前たちを見る路傍の男たちの目は勘定に入れていないのか。……臆病卑怯《おくびょうひきょう》な偽善者どもめ!」
 葉子はそんな人間からは一段も二段も高い所にいるような気位《きぐらい》を感じた。自分の扮粧《いでたち》がその人たちのどれよりも立ちまさっている自信を十二|分《ぶん》に持っていた。葉子は女王のように誇りの必要もないという自らの鷹揚《おうよう》を見せてすわっていた。
 そこに一人の夫人がはいって来た。田川夫人――葉子はその影を見るか見ないかに見て取っ
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