ように葉子を寝床の上にどん[#「どん」に傍点]とほうり投げた。
 葉子の力は使い尽くされて泣き続ける気力さえないようだった。そしてそのまま昏々《こんこん》として眠るように仰向いたまま目を閉じていた。倉地は肩で激しく息気《いき》をつきながらいたましく取り乱した葉子の姿をまんじり[#「まんじり」に傍点]とながめていた。
 一時間ほどの後には葉子はしかしたった今ひき起こされた乱脈騒ぎをけろり[#「けろり」に傍点]と忘れたもののように快活で無邪気になっていた。そして二人《ふたり》は楽しげに下宿から新橋《しんばし》駅に車を走らした。葉子が薄暗い婦人待合室の色のはげたモロッコ皮のディバン[#底本では「デイバン」]に腰かけて、倉地が切符《きっぷ》を買って来るのを待ってる間、そこに居合わせた貴婦人というような四五人の人たちは、すぐ今までの話を捨ててしまって、こそこそと葉子について私語《ささや》きかわすらしかった。高慢というのでもなく謙遜《けんそん》というのでもなく、きわめて自然に落ち着いてまっすぐに腰かけたまま、柄《え》の長い白の琥珀《こはく》のパラソルの握りに手を乗せていながら、葉子にはその貴婦人た
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