上に葉子の姿はまぶしいものの一つだ。葉子を見た人は男女を問わず目をそばだてた。
 ある朝葉子は装いを凝らして倉地の下宿に出かけた。倉地は寝ごみを襲われて目をさました。座敷のすみには夜をふかして楽しんだらしい酒肴《しゅこう》の残りが敗《す》えたようにかためて置いてあった。例のシナ鞄《かばん》だけはちゃん[#「ちゃん」に傍点]と錠《じょう》がおりて床の間のすみに片づけられていた。葉子はいつものとおり知らんふりをしながら、そこらに散らばっている手紙の差し出し人の名前に鋭い観察を与えるのだった。倉地は宿酔《しゅくすい》を不快がって頭をたたきながら寝床から半身を起こすと、
 「なんでけさはまたそんなにしゃれ[#「しゃれ」に傍点]込んで早くからやって来おったんだ」
 とそっぽ[#「そっぽ」に傍点]に向いて、あくびでもしながらのようにいった。これが一か月前だったら、少なくとも三か月前だったら、一夜の安眠に、あのたくましい精力の全部を回復した倉地は、いきなり[#「いきなり」に傍点]寝床の中から飛び出して来て、そうはさせまいとする葉子を否応《いやおう》なしに床の上にねじ伏せていたに違いないのだ。葉子はわ
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