き目にもこせこせとうるさく見えるような敏捷《すばしこ》さでそのへんに散らばっている物を、手紙は手紙、懐中物は懐中物、茶道具は茶道具とどんどん片づけながら、倉地のほうも見ずに、
 「きのうの約束じゃありませんか」
 と無愛想《ぶあいそ》につぶやいた。倉地はその言葉で始めて何かいったのをかすかに思い出したふうで、
 「何しろおれはきょうは忙しいでだめだよ」
 といって、ようやく伸びをしながら立ち上がった。葉子はもう腹に据《す》えかねるほど怒りを発していた。
 「怒《おこ》ってしまってはいけない。これが倉地を冷淡にさせるのだ」――そう心の中には思いながらも、葉子の心にはどうしてもそのいう事を聞かぬいたずら好きな小悪魔がいるようだった。即座にその場を一人《ひとり》だけで飛び出してしまいたい衝動と、もっと巧みな手練《てくだ》でどうしても倉地をおびき出さなければいけないという冷静な思慮とが激しく戦い合った。葉子はしばらくの後にかろうじてその二つの心持ちをまぜ合わせる事ができた。
 「それではだめね……またにしましょうか。でもくやしいわ、このいいお天気に……いけない、あなたの忙しいはうそですわ。忙し
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