》じていると思うと耐えられなかった。葉子はしいて自分を押ししずめるために、帯の間から煙草入《たばこい》れを取り出してゆっくり[#「ゆっくり」に傍点]煙を吹いた。煙管《きせる》の先が端《はし》なく火鉢《ひばち》にかざした岡の指先に触れると電気のようなものが葉子に伝わるのを覚えた。若さ……若さ……。
 そこには二人の間にしばらくぎごち[#「ぎごち」に傍点]ない沈黙が続いた。岡が何をいえば愛子は泣いたんだろう。愛子は何を泣いて岡に訴えていたのだろう。葉子が数えきれぬほど経験した幾多の恋の場面の中から、激情的ないろいろの光景がつぎつぎに頭の中に描かれるのだった。もうそうした年齢が岡にも愛子にも来ているのだ。それに不思議はない。しかしあれほど葉子にあこがれおぼれて、いわば恋以上の恋ともいうべきものを崇拝的にささげていた岡が、あの純直な上品なそしてきわめて内気な岡が、見る見る葉子の把持《はじ》から離れて、人もあろうに愛子――妹の愛子のほうに移って行こうとしているらしいのを見なければならないのはなんという事だろう。愛子の涙――それは察する事ができる。愛子はきっと涙ながらに葉子と倉地との間にこのごろ募
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