#「ぐっ」に傍点]と詰まってしまった。しかしすぐ盛り返して来た。
「僕《ぼく》は岡君と違ってブルジョアの家に生まれなかったものですからデリカシーというような美徳をあまりたくさん持っていないようだから、失礼な事をいったら許してください。倉地って人は妻子まで離縁した……しかも非常に貞節らしい奥さんまで離縁したと新聞に出ていました」
「そうね新聞には出ていましたわね。……ようございますわ、仮にそうだとしたらそれが何かわたしと関係のある事だとでもおっしゃるの」
そういいながら葉子は少し気に障《さ》えたらしく、炭取りを引き寄せて火鉢《ひばち》に火をつぎ足した。桜炭の火花が激しく飛んで二人《ふたり》の間にはじけた。
「まあひどいこの炭は、水をかけずに持って来たと見えるのね。女ばかりの世帯だと思って出入りの御用聞きまで人をばかにするんですのよ」
葉子はそう言い言い眉《まゆ》をひそめた。古藤は胸をつかれたようだった。
「僕は乱暴なもんだから……いい過ぎがあったらほんとうに許してください。僕は実際いかに親友だからといって木村ばかりをいいようにと思ってるわけじゃないんですけれども、全くあの境遇
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