でも上品な丁寧な言葉で事のついでのようにいった。
 岡が家を出るとしばらくして倉地も座を立った。
 「いいでしょう。うまくやって見せるわ。かえって出入りさせるほうがいいわ」
 玄関に送り出してそう葉子はいった。
 「どうかなあいつ、古藤のやつは少し骨張《ほねば》り過ぎてる……が悪かったら元々《もともと》だ……とにかくきょうおれのいないほうがよかろう」
 そういって倉地は出て行った。葉子は張り出しになっている六畳の部屋《へや》をきれいに片づけて、火鉢《ひばち》の中に香《こう》をたきこめて、心静かに目論見《もくろみ》をめぐらしながら古藤の来るのを待った。しばらく会わないうちに古藤はだいぶ手ごわくなっているようにも思えた。そこを自分の才力で丸めるのが時に取っての興味のようにも思えた。もし古藤を軟化すれば、木村との関係は今よりもつなぎがよくなる……。
 三十分ほどたったころ一つ木《ぎ》の兵営から古藤は岡に伴われてやって来た。葉子は六畳にいて、貞世を取り次ぎに出した。
 「貞世さんだね。大きくなったね」
 まるで前の古藤の声とは思われぬようなおとなびた黒ずんだ声がして、がちゃ[#「がちゃ」に傍点
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