たち》なもので二つ前の日曜日までとうとうお手紙も上げないでいたら、その日突然古藤さんのほうから尋ねて来てくださったんです。古藤さんも一度お尋ねしなければいけないんだがといっていなさいました。でわたし、きょうは水曜日だから、用便《ようべん》外出の日だから、これから迎えに行って来たいと思うんです。いけないでしょうか」
葉子は倉地だけに顔が見えるように向き直って「自分に任せろ」という目つきをしながら、
「いいわね」
と念を押した。倉地は秘密を伝える人のように顔色だけで「よし」と答えた。葉子はくるり[#「くるり」に傍点]と岡のほうに向き直った。
「ようございますとも(葉子はそのよう[#「よう」に傍点]にアクセントを付けた)あなたにお迎いに行っていただいてはほんとにすみませんけれども、そうしてくださるとほんとうに結構。貞《さあ》ちゃんもいいでしょう。またもう一人《ひとり》お友だちがふえて……しかも珍しい兵隊さんのお友だち……」
「愛ねえさんが岡さんに連れていらっしゃいってこの間そういったのよ」
と貞世は遠慮なくいった。
「そうそう愛子さんもそうおっしゃってでしたね」
と岡はどこま
前へ
次へ
全465ページ中201ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
有島 武郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング