ら早くおりておいで」
 と澄んだ美しい声で蓮葉《はすは》に叫んだ。
 「そうお」
 という声がしてすぐ貞世が飛んでおりて来た。
 「貞《さあ》ちゃんは今勉強が済んだのか」
 と倉地が聞くと貞世は平気な顔で、
 「ええ今済んでよ」
 といった。そこにはすぐはなやかな笑いが破裂した。愛子はなかなか下に降りて来ようとはしなかった。それでも三人は親しくチャブ台を囲んで茶を飲んだ。その日岡は特別に何かいい出したそうにしている様子だったが。やがて、
 「きょうはわたし少しお願いがあるんですが皆様きいてくださるでしょうか」
 重苦しくいい出した。
 「えゝえゝあなたのおっしゃる事ならなんでも……ねえ貞《さあ》ちゃん(とここまでは冗談らしくいったが急にまじめになって)……なんでもおっしゃってくださいましな、そんな他人行儀をしてくださると変ですわ」
 と葉子がいった。
 「倉地さんもいてくださるのでかえっていいよいと思いますが古藤《ことう》さんをここにお連れしちゃいけないでしょうか。……木村さんから古藤さんの事は前から伺っていたんですが、わたしは初めてのお方にお会いするのがなんだか億劫《おっくう》な質《
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