]がちゃと佩剣《はいけん》を取るらしい音も聞こえた。やがて岡の先に立って格好の悪いきたない黒の軍服を着た古藤が、皮類の腐ったような香《にお》いをぷんぷんさせながら葉子のいる所にはいって来た。
 葉子は他意なく好意をこめた目つきで、少女のように晴れやかに驚きながら古藤を見た。
 「まあこれが古藤さん? なんてこわい方《かた》になっておしまいなすったんでしょう。元の古藤さんはお額《ひたい》のお白い所だけにしか残っちゃいませんわ。がみ[#「がみ」に傍点]がみとしかったりなすっちゃいやです事よ。ほんとうにしばらく。もう金輪際《こんりんざい》来てはくださらないものとあきらめていましたのに、よく……よくいらしってくださいました。岡さんのお手柄ですわ……ありがとうございました」
 といって葉子はそこにならんですわった二人《ふたり》の青年をかたみがわりに見やりながら軽く挨拶《あいさつ》した。
 「さぞおつらいでしょうねえ。お湯は? お召しにならない? ちょうど沸いていますわ」
 「だいぶ臭くってお気の毒ですが、一度や二度湯につかったってなおりはしませんから……まあはいりません」
 古藤ははいって来た時
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