は、葉子は意識こそせねこれだけの心持ちに働かれていた。「そんな事で愛想が尽きてたまるものか」と鼻であしらうような心持ちに素早《すばや》くも自分を落ち着けてしまった。驚きの表情はすぐ葉子の顔から消えて、妖婦《ようふ》にのみ見る極端に肉的な蠱惑《こわく》の微笑がそれに代わって浮かみ出した。
 「ちょっと驚かされはしましたわ。……いいわ、わたしだってなんでもしますわ」
 倉地は葉子が言わず語らずのうちに感激しているのを感得していた。
 「よしそれで話はわかった。木村……木村からもしぼり上げろ、構うものかい。人間並みに見られないおれたちが人間並みに振る舞っていてたまるかい。葉ちゃん……命」
 「命!……命!![#「!!」は横一列] 命!!![#「!!!」は横一列]」
 葉子は自分の激しい言葉に目もくるめくような酔いを覚えながら、あらん限りの力をこめて倉地を引き寄せた。膳《ぜん》の上のものが音を立ててくつがえるのを聞いたようだったが、そのあとは色も音もない焔《ほのお》の天地だった。すさまじく焼けただれた肉の欲念が葉子の心を全く暗《くら》ましてしまった。天国か地獄《じごく》かそれは知らない。しかも
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