何もかもみじんにつきくだいて、びりびりと震動する炎々たる焔《ほのお》に燃やし上げたこの有頂天《うちょうてん》の歓楽のほかに世に何者があろう。葉子は倉地を引き寄せた。倉地において今まで自分から離れていた葉子自身を引き寄せた。そして切るような痛みと、痛みからのみ来る奇怪な快感とを自分自身に感じて陶然と酔いしれながら、倉地の二の腕に歯を立てて、思いきり弾力性に富んだ熱したその肉をかんだ。
 その翌日十一時すぎに葉子は地の底から掘り起こされたように地球の上に目を開いた。倉地はまだ死んだもの同然にいぎたなく眠っていた。戸板の杉《すぎ》の赤みが鰹節《かつおぶし》の心《しん》のように半透明にまっ赤《か》に光っているので、日が高いのも天気が美しく晴れているのも察せられた。甘ずっぱく立てこもった酒と煙草《たばこ》の余燻《よくん》の中に、すき間もる光線が、透明に輝く飴色《あめいろ》の板となって縦に薄暗さの中を区切っていた。いつもならばまっ赤《か》に充血して、精力に充《み》ち満ちて眠りながら働いているように見える倉地も、その朝は目の周囲に死色をさえ注《さ》していた。むき出しにした腕には青筋が病的に思われるほ
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