国|奴《ど》、国賊、――あるいはそういう名が倉地の名に加えられるかもしれない……と思っただけで葉子は怖毛《おぞけ》をふるって、倉地から飛びのこうとする衝動を感じた。ぎょっ[#「ぎょっ」に傍点]とした瞬間にただ瞬間だけ感じた。次にどうかしてそんな恐ろしいはめ[#「はめ」に傍点]から倉地を救い出さなければならないという殊勝な心にもなった。しかし最後に落ち着いたのは、その深みに倉地をことさら突き落としてみたい悪魔的な誘惑だった。それほどまでの葉子に対する倉地の心尽くしを、臆病《おくびょう》な驚きと躊躇《ちゅうちょ》とで迎える事によって、倉地に自分の心持ちの不徹底なのを見下げられはしないかという危惧《きぐ》よりも、倉地が自分のためにどれほどの堕落でも汚辱でも甘んじて犯すか、それをさせてみて、満足しても満足しても満足しきらない自分の心の不足を満たしたかった。そこまで倉地を突き落とすことは、それだけ二人《ふたり》の執着を強める事だとも思った。葉子は何事を犠牲に供しても灼熱《しゃくねつ》した二人の間の執着を続けるばかりでなくさらに強める術《すべ》を見いだそうとした。倉地の告白を聞いて驚いた次の瞬間に
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