をことさらにあこがれていたらしい様子は、そんな事については一言《ひとこと》もいわないが、岡の顔にははっきり[#「はっきり」に傍点]と描かれているようだった。
「そんなにせい[#「せい」に傍点]たっていやよ貞《さあ》ちゃんは。せっかち[#「せっかち」に傍点]な人ねえ」
そう穏かにたしなめるらしい愛子の声が階下でした。
「でもそんなにおしゃれ[#「おしゃれ」に傍点]しなくったっていいわ。おねえ様が早くっておっしゃってよ」
無遠慮にこういう貞世の声もはっきり[#「はっきり」に傍点]聞こえた。葉子はほほえみながら岡を暖かく見やった。岡もさすがに笑いを宿《やど》した顔を上げたが、葉子と見かわすと急に頬《ほお》をぽっ[#「ぽっ」に傍点]と赤くして目を障子《しょうじ》のほうにそらしてしまった。手あぶりの縁《ふち》に置かれた手の先がかすかに震うのを葉子は見のがさなかった。
やがて妹たち二人が葉子の後ろに現われた。葉子はすわったまま手を後ろに回して、
「そんな人のお尻《しり》の所にすわって、もっとこっちにお出なさいな。……これが妹たちですの。どうかお友だちにしてくださいまし。お船で御一緒だっ
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