た岡|一《はじめ》様。……愛さんあなたお知り申していないの……あの失礼ですがなんとおっしゃいますの、お従妹御《いとこご》さんのお名前は」
と岡に尋ねた。岡は言葉どおりに神経を転倒させていた。それはこの青年を非常に醜くかつ美しくして見せた。急いですわり直した居ずまいをすぐ意味もなくくずして、それをまた非常に後悔したらしい顔つきを見せたりした。
「は?」
「あのわたしどものうわさをなさったそのお嬢様のお名前は」
「あのやはり岡といいます」
「岡さんならお顔は存じ上げておりますわ。一つ上の級にいらっしゃいます」
愛子は少しも騒がずに、倉地に対した時と同じ調子でじっ[#「じっ」に傍点]と岡を見やりながら即座にこう答えた。その目は相変わらず淫蕩《いんとう》と見えるほど極端に純潔だった。純潔と見えるほど極端に淫蕩だった。岡は怖《お》じながらもその目から自分の目をそらす事ができないようにまとも[#「まとも」に傍点]に愛子を見て見る見る耳たぶまでをまっ赤《か》にしていた。葉子はそれを気取《けど》ると愛子に対していちだんの憎しみを感ぜずにはいられなかった。
「倉地さんは……」
岡は一路の
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