に狭いのを思った。愛子といわず貞世の上にも、自分の行跡がどんな影響を与えるかも考えずにはいられなかった。そこに貞世が、愛子がととのえた茶器をあぶなっかしい[#「あぶなっかしい」に傍点]手つきで、目八|分《ぶ》に持って来た。貞世はこの日さびしい家の内に幾人も客を迎える物珍しさに有頂天《うちょうてん》になっていたようだった。満面に偽りのない愛嬌《あいきょう》を見せながら、丁寧にぺっちゃん[#「ぺっちゃん」に傍点]とおじぎをした。そして顔にたれかかる黒髪を振り仰いで頭を振って後ろにさばきながら、岡を無邪気に見やって、姉のほうに寄り添うと大きな声で「どなた」と聞いた。
 「一緒にお引き合わせしますからね、愛さんにもおいでなさいといっていらっしゃい」
 二人《ふたり》だけが座に落ち付くと岡は涙ぐましいような顔をしてじっ[#「じっ」に傍点]と手あぶりの中を見込んでいた。葉子の思いなしかその顔にも少しやつれ[#「やつれ」に傍点]が見えるようだった。普通の男ならばたぶんさほどにも思わないに違いない家の中のいさくさ[#「いさくさ」に傍点]などに繊細すぎる神経をなやまして、それにつけても葉子の慰撫《いぶ》
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