。それは葉子をもどかしくさせるほどだった。時々葉子は倉地がこの男と組合設立の相談以外の秘密らしい話合いをしているのに感づいたが、それはどうしても明確に知る事ができなかった。倉地に聞いてみても、倉地は例ののんきな態度で事もなげに話題をそらしてしまった。
葉子はしかしなんといっても自分が望みうる幸福の絶頂に近い所にいた。倉地を喜ばせる事が自分を喜ばせる事であり、自分を喜ばせる事が倉地を喜ばせる事である、そうした作為のない調和は葉子の心をしとやかに快活にした。何にでも自分がしようとさえ思えば適応しうる葉子に取っては、抜け目のない世話女房になるくらいの事はなんでもなかった。妹たちもこの姉を無二のものとして、姉のしてくれる事は一も二もなく正しいものと思うらしかった。始終葉子から継子《ままこ》あつかいにされている愛子さえ、葉子の前にはただ従順なしとやかな少女だった。愛子としても少なくとも一つはどうしてもその姉に感謝しなければならない事があった。それは年齢のお陰もある。愛子はことしで十六になっていた。しかし葉子がいなかったら、愛子はこれほど美しくはなれなかったに違いない。二三週間のうちに愛子は山か
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