ただれているのを知っていた。ただこのままで永遠は過ぎよかし。ただこのままで眠りのような死の淵《ふち》に陥れよかし。とうとう倉地の心と全く融《と》け合った自分の心を見いだした時、葉子の魂の願いは生きようという事よりも死のうという事だった。葉子はその悲しい願いの中に勇み甘んじておぼれて行った。

    二九

 この事があってからまたしばらくの間、倉地は葉子とただ二人《ふたり》の孤独に没頭する興味を新しくしたように見えた。そして葉子が家の中をいやが上にも整頓《せいとん》して、倉地のために住み心地《ごこち》のいい巣を造る間に、倉地は天気さえよければ庭に出て、葉子の逍遙《しょうよう》を楽しませるために精魂を尽くした。いつ苔香園《たいこうえん》との話をつけたものか、庭のすみに小さな木戸を作って、その花園の母屋《おもや》からずっ[#「ずっ」に傍点]と離れた小逕《こみち》に通いうる仕掛けをしたりした。二人は時々その木戸をぬけて目立たないように、広々とした苔香園の庭の中をさまよった。店の人たちは二人の心を察するように、なるべく二人から遠ざかるようにつとめてくれた。十二月の薔薇《ばら》の花園はさびしい
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