廃園の姿を目の前に広げていた。可憐《かれん》な花を開いて可憐な匂《にお》いを放つくせにこの灌木《かんぼく》はどこか強い執着を持つ植木だった。寒さにも霜にもめげず、その枝の先にはまだ裏咲きの小さな花を咲かせようともがいているらしかった。種々な色のつぼみがおおかた葉の散り尽くしたこずえにまで残っていた。しかしその花べんは存分に霜にしいたげられて、黄色に変色して互いに膠着《こうちゃく》して、恵み深い日の目にあっても開きようがなくなっていた。そんな間を二人は静かな豊かな心でさまよった。風のない夕暮れなどには苔香園の表門を抜けて、紅葉館前のだらだら坂を東照宮《とうしょうぐう》のほうまで散歩するような事もあった。冬の夕方の事とて人通りはまれで二人がさまよう道としてはこの上もなかった。葉子はたまたま行きあう女の人たちの衣装を物珍しくながめやった。それがどんなに粗末な不格好な、いでたち[#「いでたち」に傍点]であろうとも、女は自分以外の女の服装をながめなければ満足できないものだと葉子は思いながらそれを倉地にいってみたりした。つやの髪から衣服までを毎日のように変えて装わしていた自分の心持ちにも葉子は新し
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