た。とうとう倉地は自分のために……葉子は少し顔色を変えながら封を切って中から卒業証書のような紙を二枚と、書記が丁寧に書いたらしい書簡一封とを探り出した。
はたしてそれは免職と、退職慰労との会社の辞令だった。手紙には退職慰労金の受け取り方《かた》に関する注意が事々しい行書《ぎょうしょ》で書いてあるのだった。葉子はなんといっていいかわからなかった。こんな恋の戯れの中からかほどな打撃を受けようとは夢にも思ってはいなかったのだ。倉地がここに着いた翌日葉子にいって聞かせた言葉はほんとうの事だったのか。これほどまでに倉地は真身《しんみ》になってくれていたのか。葉子は辞令を膝《ひざ》の上に置いたまま下を向いて黙ってしまった。目がしらの所が非常に熱い感じを得たと思った、鼻の奥が暖かくふさがって来た。泣いている場合ではないと思いながらも、葉子は泣かずにはいられないのを知り抜いていた。
「ほんとうに私がわるうございました……許してくださいまし……(そういううちに葉子はもう泣き始めていた)……私はもう日陰の妾《めかけ》としてでも囲い者としてでもそれで充分に満足します。えゝ、それでほんとうにようござんす。
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